AF AUTO CHINON 50mm F1.7 珍品レンズ入荷! 第2回「AF モーター 修理 編」 高知市リサイクルショップ お宝市場 満Q 葛島店
皆さんこんにちは。第1回「故障原因追求」編に引き続き、チノン珍品レンズ修理記事、第2回「AFモーター修理」編をお届けいたします。
AF AUTO CHINON 50mm F1.7 PKマウント
(貴重なチノン製AFズームレンズも入荷しました!2023.11.06)
オタクによるオタクのためのブログにて、興味のある方のみお付き合いください。それでは、よろしくお願いいたします。
モーターは動作しているのに、レンズが動かない。過去の症例を参考にモーター部を確認してみたけど、結局故障原因不明。次に考えたのが、距離リングにある歯車の摩擦が増大し距離リングが動かなくなっているのでは?とあたりを付け、さらなる分解を進めていきます。
この距離リングにある金色の歯車が、AFモーターの動力を受け距離リングを動かします。しかし、MF時は直接この距離リングを回転させる構造のレンズです。現在のAFレンズには、AF/MFスイッチが付いており、MF時はAFモーターからギアが外れ、モーターに負荷が掛からない構造になっています。しかし、このレンズには、切り替えスイッチがありません。どうなっているのか。それは、距離リングに回転トルクが外部から、掛かったら、金色の歯車が距離リングとは連動せずに、動くのです。言葉では伝えにくいのですが、MFでピントを合わせようとすると、AFモーターのギアを傷めないように、金色の歯車が、AFモーターのギアに噛み合ったまま、その位置から動かないのです。つまり、距離リングだけが、動くという原理なのです。なので、その金色のギアのトルクが上がって、モーターが動かないのでは?と考えたのです。分解して、グリスを入れ替えます。より、滑らかな動きになりました。ですが、結果に変化なし。やっぱりな。
次は、レンズヘリコイドのグリスの劣化により摩擦力が増大しモーターでは動かせなくなっているのでは?と考え、レンズを分解していきます。写真で見えているのが、しぼりユニットなのですが、この構造、富岡光学製レンズではないようです。(詳しくは、この記事を参照してください)
AFユニットとレンズを分離します。残念ながら、分離のためには、ネジロックされた調整モジュール(近赤外線照射ユニット)の取外しが必要で、案の定、後に、調整に手こずることになりました。
マウント部も分解し、ヘリコイドを露出させていきます。
顕になったヘリコイド部分。金属くずが混ざり、真っ黒くなった粘土状のグリスを、きれいに入れ替えます。
この後、さらなる分解を経て、完全分解に至ります。再度組み立て、ヘリコイドのトルクを確認。明らかに、分解前よりスムーズに回転しています。もしかして、これで上手くいくのでは?期待は膨らみます!いざ動作確認!・・・・・・・やっぱ動かんなぁ!はぁ~。これもダメか。ヘリコイドの組み上げにてごずったため、ここまで実に6時間以上経過。どっと疲れが出たので、この日の作業はこれで、終了。この時点で、すでに諦めモードのオタクなのです。
この間、数日おきに元所有者様が、ご来店され、修理の進捗の確認をされます。なんだか、プレッシャーを感じます。(笑)でもなんで?このレンズを修理していることを知っていたのだろう。
ずいぶん、あれから時間が経過しました。ジャンク品として、販売することにしていたのですが、どうしても諦めがつかず最後にもう1度だけ、と心に決め、モーター部分を取外してみました。
詳しく観察。ボディー中央に巻かれたアルミテープが気になり、剥がしてみると。なんと、モーターが2つに分かれた!そして中身があらわに!
なんと!ギアードモーターじゃないですか!円筒形の筒の中にギアが隠れているとは!そんなの聞いてないよぉ!そこで、ピン!ときました。もしかして、回転トルクが低下していないか?通電して確認します。やはり!トルクが全くありません。回転コソしていますが、指で押さえるだけで、回転は止まってしまいます。(ギアに割れがあると、トルクがかかったとき、軸上でギアが空回りし、仕事をしないのです。)原因を確信したオタクはモーターを分解します。上から1つ1つ、順番と向きを記録しながら、ギアを外していき、損傷の有無を確認していきます。お宝の在り処を確信したトレジャーハンターのように、ドキドキしながら。(笑)
有りました。ありました。やはり、当初の見立て通り、樹脂製ギアの損傷が原因でした。でかした、オタク!
(2つ上の)写真では見えていない、一番奥(底)にあった直径2mmほどのポリアミド樹脂製のギアに割れが有りました。歯数は10。原因の特定ができ安堵しました。あとは同じものを、ジャンクBOXの部品に求めるだけです。
このサイズのギアは通常、AFモーター内では見ないサイズ(小さすぎる)です。100本分は下らないであろう、いろいろなレンズの分解後残骸パーツから見つけました。軸経、ギア径、歯数全て同じものです。タムロン製レンズのしぼりユニット用モーター(上の写真にある、金色のギアがそれで、しぼり幕を開閉するモーターのギアです。)から金属製の、そのギアを取り外し移植、なんなく修理完了。トルクが回復したモーターの回転は指では止められません。歓喜の瞬間です。ヨッシャー!
最初に、トルクの低下を見つけていたならば・・・・ギアードモーターであることに気づいていたならば・・・・簡単に修理できていたものを。トホホ。素人修理なんて、こんなもんです。
分解の際に、一旦取り外すと、再度調整が必要なモジュール、近赤外線照射ユニットの調整作業に、時間を要しました。調整しては、組み立て動作精度確認。また分解をひたすら、繰り返します。調整用機器が無い分、分解と調整、組み立てを繰り返すしか方法がありません。ですが、気分は晴れ晴れしています。なぜなら、この作業、回数さえこなせば、必ず調整できるから。原因不明の修理作業とは、格が違いすぎます。
なんとか修理が完了いたしました。AFも動作しています。しぼり動作等、正常に作動しています。(このAF速度や作動音が元通りなのかどうかの判断はできません。最初から故障していたので)。
ネット上にも、このレンズの内部構造や分解に関する記事が全くない中、故障の原因も分からないのに、分解し、紆余曲折を経たとは言え、最終的に実用品にまで、仕立て上げることができたドタバタ・ストーリーをお楽しみいただけましたでしょうか。
完成したレンズによる試写結果が、次回最終報告になります。いや~完了まで、今回も長かったな。ここまで、読み進めて頂きまして誠にありがとうございました。次回の報告と同時に、店舗で、このレンズの販売を開始致します。価格は店頭での発表となりますが、販売まで、今しばらくお待ちくださいませ。
なんとなく、元所有者様が買い戻されるのではないかな?なんて感じております。テスト撮影作業が残っているため、元所有者様へは、完成の報告を遅らせようっと。すぐに売れ!って言われたら困るから。(笑)だめですよ。このブログを見たって言われても、テストが終わるまでは、絶対だめです!
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