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AF AUTO CHINON 50mm F1.7 珍品レンズ入荷!     第3回「テスト撮影  編」    高知市リサイクルショップ      お宝市場 満Q 葛島店

 皆さんこんにちは。第2回「AFモーター修理」編に引き続き、チノン珍品レンズ修理記事、第3回「テスト撮影」編をお届けいたします。

AF AUTO CHINON 50mm F1.7  PKマウント

 オタクによるオタクのためのブログにて、興味のある方のみお付き合いください。それでは、よろしくお願いいたします。

 一旦は欧州方面に輸出されるも、再び日本へもどってきたこのレンズ。いつからか、モーターが故障し、故に所有者が度々変わるという数奇な運命。こんな不運な運命に思いを馳せながら、テスト撮影に望んできました。それでは、早速テスト結果を見ていきましょう。(テスト機はEOS 5D2です。レンズにマウントアダプターを装着して、さらに1.5倍のテレコンをかましての撮影になります。何かをかまさないと、おでこにが邪魔してマウントできないのです。Jpeg撮って出し)

 最初にボケ味の確認。開放撮影。極々普通。

 接写作例。開放撮影。(チューブ使用、MFピント。撮影距離50cm)解像度、色にじみなどは確認できず、満足です。

 近景作例。開放撮影。逆光ではフレアが発生します。

 中景作例。開放撮影。神社での夏祭り。

 遠景作例。F4.0 高知県いの町「にこ淵」仁淀ブルー

遠景作例。F5.6 福山通運トラックターミナル

 今回の修理にもいろいろと、ハプニングが有りましたが、紆余曲折を経て、見事復活したこのレンズは今、私の手元にあります。製造後40年も経過しますが、実写結果は極めてナチュラルな描写傾向で、良く写るレンズです。AF機構が近赤外線を利用した三角測量方式なのですが、これが、想像以上にキビキビとしていて、心地良かったです(同じ三角測量方式のAF RIKENON50mm はゾーンAFでしたが、このレンズは無段階AFです)。そして、真っ暗な場所やコントラストの低い無地の壁でのAFがズバリと合焦するところには、驚きを感じました。逆に、ガラス越しの被写体にはピントが合いません。ガラスに合焦してしまいます。赤外線を利用したAFだからですね。現在のAF性能と大きく違う点です!欠点は、中景に位置する(概ね10m以上)被写体へのAF精度が極端に低下することです。赤外線が届きにくいからかな?受光センサーが赤外線の反射を検出しなければ、レンズに「無限に合わせろ」と指示しているような感じを受けます。しかし、F値を5.6以上にしていればピント精度に大きな問題は感じません。

 そんなこんなで、一様に問題点がないことを確認できましたので、店舗で販売することにします。と、申しますか、実はすでに売れています。そう、やっぱり!前所有者様が買い戻しされました。第2回記事をアップしてからは、毎日店舗においでになり、販売開始日を確認されるのです。はじめから、私が修理するだろうと見込んでいたらしく、それを買い戻す計画だったと。もし、失敗していたら、どうされるおつもりだったのかとお尋ねすると、その時はそのときよ!とのことでした。なんともはや。もう、修理して販売するのはやめようと、思う次第です。だって、失敗する確率のほうがはるかに高いのが現実ですから。今回は、たまたま2回連続で上手く行きましたが、こんなこと稀です。今後、この所有者のような行為は一切、ご遠慮下さいね。責任取れませんから。(笑)

 以上、カメラオタクによる希少なオールドレンズ修理レポートでした。ここまで、お読みいただいまして誠にありがとうございます。最後に、お約束事項。改造・分解には、故障や怪我など、それ相応のリスクが伴います。このブログを参考に同じようなことをされたことにより発生する、トラブルや障害には、当方は一切関与いたしません。自己責任の範囲で、お楽しみください。

AF AUTO CHINON 50mm F1.7 第1回「故障原因追求」編 はこちら

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AF AUTO CHINON 50mm F1.7 珍品レンズ入荷!     第2回「AF モーター 修理 編」    高知市リサイクルショップ      お宝市場 満Q 葛島店

 皆さんこんにちは。第1回「故障原因追求」編に引き続き、チノン珍品レンズ修理記事、第2回「AFモーター修理」編をお届けいたします。

AF AUTO CHINON 50mm F1.7  PKマウント

(貴重なチノン製AFズームレンズも入荷しました!2023.11.06)

 オタクによるオタクのためのブログにて、興味のある方のみお付き合いください。それでは、よろしくお願いいたします。

 モーターは動作しているのに、レンズが動かない。過去の症例を参考にモーター部を確認してみたけど、結局故障原因不明。次に考えたのが、距離リングにある歯車の摩擦が増大し距離リングが動かなくなっているのでは?とあたりを付け、さらなる分解を進めていきます。

 この距離リングにある金色の歯車が、AFモーターの動力を受け距離リングを動かします。しかし、MF時は直接この距離リングを回転させる構造のレンズです。現在のAFレンズには、AF/MFスイッチが付いており、MF時はAFモーターからギアが外れ、モーターに負荷が掛からない構造になっています。しかし、このレンズには、切り替えスイッチがありません。どうなっているのか。それは、距離リングに回転トルクが外部から、掛かったら、金色の歯車が距離リングとは連動せずに、動くのです。言葉では伝えにくいのですが、MFでピントを合わせようとすると、AFモーターのギアを傷めないように、金色の歯車が、AFモーターのギアに噛み合ったまま、その位置から動かないのです。つまり、距離リングだけが、動くという原理なのです。なので、その金色のギアのトルクが上がって、モーターが動かないのでは?と考えたのです。分解して、グリスを入れ替えます。より、滑らかな動きになりました。ですが、結果に変化なし。やっぱりな。

 次は、レンズヘリコイドのグリスの劣化により摩擦力が増大しモーターでは動かせなくなっているのでは?と考え、レンズを分解していきます。写真で見えているのが、しぼりユニットなのですが、この構造、富岡光学製レンズではないようです。(詳しくは、この記事を参照してください)

 AFユニットとレンズを分離します。残念ながら、分離のためには、ネジロックされた調整モジュール(近赤外線照射ユニット)の取外しが必要で、案の定、後に、調整に手こずることになりました。

 マウント部も分解し、ヘリコイドを露出させていきます。

 顕になったヘリコイド部分。金属くずが混ざり、真っ黒くなった粘土状のグリスを、きれいに入れ替えます。

 この後、さらなる分解を経て、完全分解に至ります。再度組み立て、ヘリコイドのトルクを確認。明らかに、分解前よりスムーズに回転しています。もしかして、これで上手くいくのでは?期待は膨らみます!いざ動作確認!・・・・・・・やっぱ動かんなぁ!はぁ~。これもダメか。ヘリコイドの組み上げにてごずったため、ここまで実に6時間以上経過。どっと疲れが出たので、この日の作業はこれで、終了。この時点で、すでに諦めモードのオタクなのです。

 この間、数日おきに元所有者様が、ご来店され、修理の進捗の確認をされます。なんだか、プレッシャーを感じます。(笑)でもなんで?このレンズを修理していることを知っていたのだろう。

 ずいぶん、あれから時間が経過しました。ジャンク品として、販売することにしていたのですが、どうしても諦めがつかず最後にもう1度だけ、と心に決め、モーター部分を取外してみました。

 詳しく観察。ボディー中央に巻かれたアルミテープが気になり、剥がしてみると。なんと、モーターが2つに分かれた!そして中身があらわに!

 なんと!ギアードモーターじゃないですか!円筒形の筒の中にギアが隠れているとは!そんなの聞いてないよぉ!そこで、ピン!ときました。もしかして、回転トルクが低下していないか?通電して確認します。やはり!トルクが全くありません。回転コソしていますが、指で押さえるだけで、回転は止まってしまいます。(ギアに割れがあると、トルクがかかったとき、軸上でギアが空回りし、仕事をしないのです。)原因を確信したオタクはモーターを分解します。上から1つ1つ、順番と向きを記録しながら、ギアを外していき、損傷の有無を確認していきます。お宝の在り処を確信したトレジャーハンターのように、ドキドキしながら。(笑)

 有りました。ありました。やはり、当初の見立て通り、樹脂製ギアの損傷が原因でした。でかした、オタク!

 (2つ上の)写真では見えていない、一番奥(底)にあった直径2mmほどのポリアミド樹脂製のギアに割れが有りました。歯数は10。原因の特定ができ安堵しました。あとは同じものを、ジャンクBOXの部品に求めるだけです。

 このサイズのギアは通常、AFモーター内では見ないサイズ(小さすぎる)です。100本分は下らないであろう、いろいろなレンズの分解後残骸パーツから見つけました。軸経、ギア径、歯数全て同じものです。タムロン製レンズのしぼりユニット用モーター(上の写真にある、金色のギアがそれで、しぼり幕を開閉するモーターのギアです。)から金属製の、そのギアを取り外し移植、なんなく修理完了。トルクが回復したモーターの回転は指では止められません。歓喜の瞬間です。ヨッシャー!

 最初に、トルクの低下を見つけていたならば・・・・ギアードモーターであることに気づいていたならば・・・・簡単に修理できていたものを。トホホ。素人修理なんて、こんなもんです。

 分解の際に、一旦取り外すと、再度調整が必要なモジュール、近赤外線照射ユニットの調整作業に、時間を要しました。調整しては、組み立て動作精度確認。また分解をひたすら、繰り返します。調整用機器が無い分、分解と調整、組み立てを繰り返すしか方法がありません。ですが、気分は晴れ晴れしています。なぜなら、この作業、回数さえこなせば、必ず調整できるから。原因不明の修理作業とは、格が違いすぎます。

 なんとか修理が完了いたしました。AFも動作しています。しぼり動作等、正常に作動しています。(このAF速度や作動音が元通りなのかどうかの判断はできません。最初から故障していたので)。

 ネット上にも、このレンズの内部構造や分解に関する記事が全くない中、故障の原因も分からないのに、分解し、紆余曲折を経たとは言え、最終的に実用品にまで、仕立て上げることができたドタバタ・ストーリーをお楽しみいただけましたでしょうか。

 完成したレンズによる試写結果が、次回最終報告になります。いや~完了まで、今回も長かったな。ここまで、読み進めて頂きまして誠にありがとうございました。次回の報告と同時に、店舗で、このレンズの販売を開始致します。価格は店頭での発表となりますが、販売まで、今しばらくお待ちくださいませ。

 なんとなく、元所有者様が買い戻されるのではないかな?なんて感じております。テスト撮影作業が残っているため、元所有者様へは、完成の報告を遅らせようっと。すぐに売れ!って言われたら困るから。(笑)だめですよ。このブログを見たって言われても、テストが終わるまでは、絶対だめです!

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 皆さんこんにちは。AF RIKENON 50mm f2 に続き、黎明期(80年代前期)のAFレンズが入荷しました。立て続けに、希少なレンズが入荷するとは、なんと幸せなことよ。

 AF AUTO CHINON 50mm f1.7 PKマウント

 ジャンク品として入荷した、このレンズ。非常に数の少ない希少なレンズのようでしたので、実用品として復活させることに。復活までの、執念の体当たり作業工程をを複数回に分けて、レポート致します。オタクによる、オタクのためのブログにて、興味のあるかたのみ、お付き合いください。それでは、第1回「故障原因追求」編を開始します。よろしくお願いいたします。

 私ことカメラオタクは、このレンズを初めて見ました。大きな目玉が2個くっついた、かなりインパクトのある出で立ち。左右非対称のレンズって私、大好きです。1982年発売開始のチノン製のAFレンズで、マウントさえ同じなら、MFカメラをAFカメラにしてしまう、レンズ完結式AFレンズで、測距機能、モーター、駆動用電源など全てをレンズ本体に搭載しています。AF開始ボタン、合焦音ON/OFFスイッチ以外なにもついていません。近赤外線を照射し三角測量方式でオートフォーカスを実現するレンズのようです。当時「チノン」というメーカーは有名ではなく、主に海外に向け、8mmカメラを輸出していたらしいです。このレンズも、そもそも生産数が少ない上、海外にも輸出されていたそうで、現在、国内の中古市場でもめったに、お目にかかれないレア中のレアなレンズなんだと、説明していただきました。確かに、レンズ下部に貼ってある金色のシール「PASSED」は財団法人日本写真機検査協会のもので、海外に輸出される製品に、品質を保証するために検査を受けた証として添付されていたもののようです。つまり、このレンズは、海外からの出戻りレンズのようなのです。元所有者様によると、レンズ内部はきれいなのだけど、AF機能が故障(モーターは動いているけど、レンズが動かない)しているとのこと。オークションサイトでジャンク品として落札されたが使い物にならず、あえなく、売却となったそうです。ホントにお売り頂いて構わないのかと、何度も聞き直し、お買取させて頂きました。ありがとうございます!そこまで、レアなレンズなら、なんとかできないか?って俄然、やる気が湧いてくるカメラオタクなのでした。(今回はCanon機での使用は想定しておらず、とにかく実用品レベルまでの復活を優先させることに。)

 実際に確認します。単4電池を3本装てんし、テスト機にマウントしAF開始ボタンを押すと、モーター音が確かにします。しかし、AFは作動しません。このような事例は、殆どの場合、ギアードモーター内の樹脂ギアの割れか、プーリーベルトの断裂が原因です。(過去の修理経験より)故障原因に確信をもっていたので、すでに勝利を手にしたかのように、分解作業を開始します。気分は実に、晴れやかです!

 躯体がプラスチック製なので、慎重に分解していきます。

 場所により、ビスのピッチや長さが異なっているため、分解しながら記録していきます。テンポよく、順調です!

 写真右側にある縦に長いものが、今回のキモとなるAFモーターで、その横(目玉の前)にあるパーツが、赤外線照射モジュールです。一番左側の青いパーツはコンデンサで、素手で触ると感電します。左側の目玉の前に、赤外線受信モジュールが配されています。この写真でも、何箇所かに、赤いネジロックが施されているパーツがありますが、基盤の下にも、多数調整された箇所が存在します。分解の際、これらのパーツを触らないといけなくなった場合、元通りに調整するのに、相当の苦労が待ち受けます。できることなら、触りたくないところです。

 そして、問題のモーターを取外します。過去分解したレンズのAFモーターは、殆どがギアードモーター(Canon製や新しいレンズはUSMやSTMモーターが搭載されていますが)なのだけれど、このモーターは、そのようには見えませんでした。(これが、大きな判断ミスとなり、最後まで苦しむことになるのです)さっきまで、テンポ良くきていたのに。なんだか、嫌な予感。

 上の写真のように、通常は、このようなギアードモーターが、レンズ内に配されるのですが。

 これが(上の写真)、取外したモーター。ギアードモーターのようには見えません。全然見た目が違うでしょう?(レンズに使用できるモーターの特性を考えれば、ギアードモーターでない、はずがないことは、冷静な時だったら、簡単に気づくことができるのに。)

 リード線に電流を流すと、モーターはちゃんと回転しました。(ここで、モーターのトルクが著しく低下していることに気づかなかったことが、2つ目の大きなミスとなるのです。ギアードモーターであることに気づくチャンスを2回も見逃したのです。調子が悪いときってこんなもんです。って、さっきまで絶好調だったくせに)

 故障の原因が、見当していたものとは、違っていることに驚愕し、うろたえるオタクなのでした。困り果て、この日は、これで作業終了。その後も、修理方針(どこを、どうすればいいのか全く分からず)が立たず、長く放置の時間が続くのでした。

 それでも、後日なんとか、気を取り直し、作業再開です。どんどん分解を進め、最終的には完全分解してしまいました。しかし、原因の特定には至らず、敗北感を味わいながら、元通り組み立てることに。(ジャンク品として、販売することを決意してのことです。)だけど、最後の最後に、その原因に気づくことになるのです。自身の執念深さには、我ながら恐ろしくなります!(笑)。さて、どのような原因だったのか、次回をお楽しみに!第2回は、復活に向けた修理の記録をお届けいたします。

第2回 AF AUTO CHINON 50mm F1.7「AF モーター 修理編」はこちら

第3回 AF AUTO CHINON 50mm F1.7 「テスト撮影」編 はこちら

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